「鳥籠荘1」「付喪堂3」「死刑執行人サンソン」

「鳥籠荘の今日も眠たい住人たち1」壁井ユカコ電撃文庫

 電撃文庫って男性向けのレーベルという印象があるんですが、この作品はどちらかといえば女性向けに感じました(イラストに引きずられた?)。とはいえ男の自分ですが楽しみました。そもそも普通の文庫レーベルに入っていても違和感の無い内容に思いました。・・つくづくライトノベルの枠組みってわからないですね。それがいいところなのでしょう。

付喪堂骨董店3」御堂彰彦電撃文庫

付喪堂骨董店〈3〉―“不思議”取り扱います (電撃文庫)

付喪堂骨董店〈3〉―“不思議”取り扱います (電撃文庫)

 いつも通り1,2,3章でアンティークに翻弄され、4章でニヤリング。4巻の登場を望む。

「死刑執行人サンソン −国王ルイ十六世の首を刎ねた男−」安達正勝集英社新書

「『ジョジョの奇妙な冒険Part7』のジャイロ・ツェペリはこのサンソンがモデルなんです」
ブックストア談にて荒木飛呂彦さんによる紹介の帯がついて面出し展開されていました。ジョジョは文庫版1巻しか(!)読んでいないのですが少し気になっていたので購入。

これは面白い。買いです。

 ルイ16世やマリーアントワネット、そして革命混乱期に二千人以上を処刑したパリの死刑執行人四代目シャルル−アンリ・サンソンは何を思いながらその職務を遂行し続けたのか・・。
 通常”自由を勝ち取った”という点で良い印象の強いフランス革命ですが、まさにその影をあぶりだす内容になっています。といってもフランス史の知識がないと読めん、ということはありません。むしろエピソードの組み合わせ方が上手く小説のように楽しめてその上フランス革命期の空気を知ることが出来るという、絶好のフランス革命期の入門書ともなっています。
 初めに語られる初代サンソンが処刑人になったエピソードがもうすでに小説のようです。そしてひょんな機会である公爵夫人と食事を共にした際自らの職業を伏せていたというだけで訴訟にかけられ、その上弁護士が誰も弁護を引き受けてくれなかった(!)ためサンソンが自分で弁護しなければならなくなった・・という話で処刑執行人の家系への当時の根強い差別を示す。後にその処刑に携わることになるルイ16世との邂逅。そしてギロチンの登場とルイ16世の意外な趣味との因縁じみた関係、エトセトラ。
 それらが有機的に繋がりフランス革命とそれに直面するサンソンの感情を丁寧に語りおろしていく。王党派でありながら国王を断頭台にかける運命。処刑人ながら死刑廃止論を胸中に秘めるサンソンと革命混迷時に加速する死刑判決の乱発。
 「え!?作者話作ってるんじゃない?」と思えてしまう程の死刑執行人サンソンの人生。帯の「この男人類究極の実話だ」というフレーズは伊達ではない。