〜"名物"が動かす戦国の世〜 「へうげもの 1〜6」 山田芳裕 講談社モーニング
本当に面白いです。そして、うまい。
「上手い」じゃなくて「旨い」、という感じ。
出版された形を見る上で、マンガと小説との話の展開の仕方の違いというのは色々あると思いますが、マンガの方が一話完結、もしくはある程度の話のオチをきちんとつけてくるというのがあると、個人的には思います。
つーか長編の場合、小説の単行本に第○○話という表示自体あんまり見ないです。何巻にも渡って長丁場を用意するようなマンガでも、一巻一巻、「○○話」の形で収録されているのに。
マンガがそうなっているのは言うまでもなく、雑誌に載せられたものが(加筆などを経た上でも)そのまま単行本に収録されるから、なのだろうが、小説にそういうのが少ない理由とかはわかりません。マンガ・小説両方において、自分は雑誌派じゃなくて、本が発売されてから読む方なんで。
それはそうとして、そういったマンガを読んでいて痺れるのは、一話だけを取り出しても綺麗な短編として成り立っているのに、さらに全体として読んで大きな流れを感じさせてくれるというものです。
そして「へうげもの」も自分にとって、そういう作品です。
古田左介の、明らかに戦国物の登場人物としておかしい視点もきちんとしょっぱなから描写。さらにのちの秀吉の台頭を、ただその一戦の内に匂わせる松永の言葉と秀吉の行動。
そして秀吉の取った作戦だけ見ても面白い。さらにこの戦の結果、何を得ることができたのかという点で、秀吉と古田の違いもきれいに見せてくれます。
また別の巻の話ですが、明智光秀の最期にまつわるエピソードが、凄い大胆で、いいです。
これを読んでいたので、古田左介が、まあ、ああなることを知ってしまっているわけで、それがなんとも。
今、読み返している途中ですが、古田織部に関するところを引用。
「織部というのは人の名前ですか」
それは間違いない、確か利休の弟子か何かだった。
「そうです。――古田織部正重然(ふるたおりべのしょうしげなり)」
先生は、一音一音考えるように言って、
「関ヶ原の合戦の頃の人ですね。しかしもちろんこの人の作ったものが織部というわけじゃあない。今でもこの茶碗のようにどんどん作られていますからね。つまり、この人の好みだとされるのが織部という形式です。それまでの茶器とは違った大胆なデザインのものですね」
「すると、型破りがひとつの型になってしまったというわけですね」
「まあ、そういえばそうです」
(p22)
「へうげもの」のなかでは、古田左介だけではなく、当時の茶人の師とあがめられた利休までも、古来の型を破ろうと利休自身の戦いのために権力のなかへと身を捧げます。
古典というのは受け継ぐ者から見た姿とは違って、元来は革命的なものなのでしょう。
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「へうげもの」で本能寺の変の前において行われた(?かどうか、史実かどうかはまだ知らない)宴が描写されていていたというのも自分には面白かった。↑では「安土城、名物茶道具―信長と唐物」という章もあるので内容としてぴったりではないかなあと思い購入。
名物から見た本能寺の変、いかに。