「ガリレオの苦悩」

 『ガリレオの苦悩』東野圭吾 文藝春秋

ガリレオの苦悩

ガリレオの苦悩

容疑者Xの献身」以後、無二の友人でありライバルである石神の犯罪で心の傷を負った湯川が、どのような過程を経て復活していくか。
そういう話ではないかなぁと思いながら読んでいました。タイトルの「苦悩」がそういう意味とは限らないが。

ドラマ・映画でおなじみの内海刑事が原作サイドで初登場します。
湯川と草薙。おそらくその形式では湯川が探偵役に舞い戻ることはなかっただろうと想像する。
なぜならばあの事件での湯川の苦しみを最も間近で見ていたのが、草薙なのだから。

 内海刑事が登場したのは「登場人物を増やしたほうが動かしやすくて、マンネリも防げる」、「雑誌掲載当時からドラマ化が動いていたから」とはじめは邪推していましたが、この1対1のソリッドな構図を変化させるためでは、と読んでから思い直す。
作品内では内海の真実への真摯な姿勢が湯川の心を動かします。

 鋭く行動派な内海刑事。ドラマより優秀です。むしろ今回で一人称の座を引きずり降ろされた草薙が情けなくなったように見えてしかたがない(笑)


 マンションの下に居ながらにして7階の部屋から人を突き落とすことはできるのか・・。一人の女刑事が追う。 『落下る(おちる)』
内海刑事初登場。トリックだけを見れば33分探偵(自分は好きでしたが)。むしろ前作「容疑者」以降捜査協力から手を引いていた湯川がどうして再び捜査にかかわることになるのかが主眼にある話です。

 車椅子でしか移動できない身でありながら、離れた所にいる一人の男を刺殺し放火する。湯川の恩師である「メタルの魔術師」はいかにして可能たらしめたか? 『操縦る(あやつる)』

 ペンションの一室にて。チェーンがけした入口と閉じられた窓。科学という鍵で湯川はどのように密室をひらく。 『密室る(とじる)』


 ダウジングで事件の重要な証拠を発見したという少女。湯川はそれを嘘と看破するのか? 『指標す(しめす)』


 湯川を執拗に敵視する犯人は「悪魔の手」を名乗り脅迫に溺れる。湯川は止められるか。 『攪乱す(みだす)』